高嶺の花男くん

今のコト 過去のコト

最後のサヨナラ

『岩田先生とは、どうなの?』


職場の先輩に聞かれた。




『うーん…この前も会ったんだけど…』


何て言っていいのか悩んでいると



『今ね、彼女来てるみたいだよ。』



えっ…



先輩の仲の良い先生から聞いたらしい。


私と岩田先生が飲みに行ったりドライブしたりしてることは私から聞いていたので

どうなっているのか気になったと。


『好きなんでしょ?

岩田先生は何て言ってるの?』



んー…好きなんだけどね。

岩田先生も…彼女と別れるって…


『じゃ、別れ話してるのかもね😊』


と先輩は言ってくれた。






それから、しばらく岩ちゃんから連絡なし。


彼女と、どうなったのか。

知りたかったけど怖くて連絡できなかった。




3週間くらいかな。

もっともっと長く感じたけど。

電話がきて会うことに。



久しぶりに見る岩ちゃんは変わらず

かっこよかった。

ずっと見ていたいけど、恥ずかしいから

すぐ目を逸らしちゃう。


何度も会ってるのにね。



『彼女来てたの?』と聞きたいけど

聞けなくて、全然違う話をしたりして。



そしたら、岩ちゃんが話してくれた。


『前に会った時に彼女と別れるって話した

よね。で、彼女に電話したんだ。

好きな人ができたから別れてほしいって。

でも別れたくない。別れないって。


会ってちゃんと話した方がいいかなとも

思ったけど、会うと余計に別れ難いかなと

思ってね。

でも、結局どうにもならなくて。

また電話するってことにしたんだ。


そうしたらね…彼女来たんだ。俺に会いに。』



黙って、うんうん頷いて聞いていたけど

続き…聞きたいけど聞きたくないような…



直接会って話しても、彼女は別れない。

別れたくないと。

会ったら尚更…別れたくないと。



そうだよね。

私が彼女なら別れたくないわ。

他の女になんて渡したくないよね。



結局…彼女と別れることができなかった

岩ちゃん。

ごめん…と謝る岩ちゃん。



私もずっと隠していたことを話した。

妻子ある人と付き合ってたこと。


岩ちゃんと出会って会うようになってから

Tさんとは別れたけど、まだ忘れてないこと。

たまに電話くること。



でも、本当は、岩ちゃんが大好きで。

会いたくて会いたくて。

岩ちゃんの彼女になりたくて。


これは言えなかったけど…。






最後に、岩ちゃんの顔見て。

目を逸らさないで。

キスして。

息が止まりそうなくらい、ぎゅーって

抱きしめられて。




あれから、何度か岩ちゃんに会った。

偶然に。

いつ見ても、やっぱりかっこよくて。

挨拶しかできなくて。

切なくて…。



転勤しちゃってからは見かけることも

なくなっちゃって。




もう恋なんてしないなんて

思ってはいなかったけど

もう好きな人なんて

できないんじゃないかって思ってた。

羊と鋼の森

やっと学校が始まり、自分の時間ができた。


『私のいない時間、ママがやってね❗️』


と娘に託されたのは…どうぶつの森。


娘の島にいる可愛くない動物を引っ越し

させて、可愛い動物をお迎えする。


これが10人…いや、10匹?いるから大変。


でも、娘の喜ぶ顔が見たくて頑張った❗️


ネコ、ウサギ、シカ、リス、ヒツジ。


次は、その動物達の写真が欲しいと。


それは自分でやってね😂





羊と鋼(はがね)の森。


最初、羊と鼻毛の森だと思って


ええっ?(゚д゚;)


子供達も鼻毛だと思ったみたいで


『ママ~、鼻毛の森だって🤣』と。


どうぶつの森をやりながら、ふと思い出す。

ヒロイン

彼女がいる岩ちゃんと『友達』として

飲みに行ったりドライブしたり。



『友達』って何なのか…


彼女にしてみれば、『友達』だろうと

何だろうと、自分の彼氏が他の女と

飲みに行ったりドライブしたりなんて

嫌に決まってる。

それじゃなくても遠距離で不安だと

言うのに。


Mさんと遠距離になった時に

会いたくて会いたくて

でも、どうすることもできなくて

不安な日々を過ごしていたから

その気持ちは痛い程わかるのに。


でも、岩ちゃんに会う度に

夢中になる自分がいた。

『友達』と言いながら…



何度目かのドライブで海を見に行った。

MさんやTさんとも来たことがある砂浜。

他に誰もいなくて

波の音だけが聞こえて。




『手…繋いでいい?』

真剣な顔で聞かれた。



ずっとね。

手繋ぎたいなって思ってた。

恋人なら、そんなこと聞かずに

繋いでくれるのかな…



『うん…』って言ったら

笑顔になって、手を繋いでくれた。


誰もいない夜の砂浜を手を繋いで歩く。

しばらく歩いて…

岩ちゃんが立ち止まった。



『どうしたの?』って聞いたら

何も言わずに抱きしめられて

そして、キスされた。



友達だからって止めることできたのに


彼女の気持ちわかるくせに



キスされたら、そんなこと

どうでもよくなった。


最低だな…





『俺、彼女と別れるよ』って岩ちゃんが言った。



嬉しいはずなのに


どうしてかな…


Mさんと別れた時のことを思い出す



他に好きな人がいると言われて

すごく悲しくて

嘘ならいいのにって


本当の理由は違ったけど…



手の届く所に岩ちゃんがいるのに

素直になれない



本当は彼女と別れてほしいのに

岩ちゃんの彼女になりたいのに


ずっと一緒にいたいのに



電話して

飲みに行って

ドライブして

手を繋いで


キスして…



ドラマのヒロインになったような

夢みたいな時間だった。